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 樹木中にはおよそ4割セルロースが含まれています。これが紙として使われていることはご存知のことと思います。残りの約半分がリグニン、その残りはヘミセルロースという物質からできています。リグニンは樹木中ではセルロースでできた細胞と細胞をくっつける接着剤の役割を担っています。リグニンの分子構造は非常に複雑ですが、多数のいわゆる亀の甲と呼ばれる6角形の芳香環から構成されています。芳香環は他の分子にくらべ化学的に安定な構造であるため、高耐熱性や力学強度が非常に高い材料の元になる成分です。これを活用すれば単に石油代替材料となるだけではなく、高い付加価値を持った樹脂ができます。ところが、これまで製紙産業では木からセルロースを抽出する際に、リグニンは不要物として廃棄されていたのです。製紙の際に副生するリグニンは、黒液とも呼ばれ、真っ黒なドロドロしたもので、そのままでは溶解性が低いとか加工性が悪いなどの問題があり、ある意味やっかいものであったわけです。共同研究先の森林総合研究所では、木にポリエチレングリコールを加え、リグニンを抽出することによって扱いやすい形のリグニンを作る技術を開発しました。そこで我々の技術でリグニンから様々な優れた特性を持つ石油代替樹脂を開発するということになったのです。 ■現在、研究はどのくらい進んでいるのでしょうか?また、このセンターで具体的に取り組むこととは?  本研究センターでの課題の一つはリグニンの樹脂化です。樹木から抽出し、乾燥した状態のリグニンは、見た目はただの木くずのようなものです。色は焦げ茶色で、少しチョコレートのような香りがし、食べたらおいしそうな感じです。カカオも木からとれるものですし、リグニンの中にはバニラに類似する構造も含まれているため、リグニンがおいしそうなのも頷けます。話を元に戻すと、リグニンはこのような木くずのような形状のものなので、それを例えば圧縮したり、溶かしてみたりしても、いわゆる普通のプラスチックのようなしなやかな樹脂を作ることはできません。リグニンの構造を調べたところ、多数の水酸基を持つことが分かり、それをとっかかりとして分子を架橋させることにより樹脂化が可能になります。その架橋の方法を変えると様々な特性を持つ樹脂ができ、用途によって使い分けることができます。開発した材料は既に自動車用の部材や電気デバイス等への応用も始まっています。 改質リグニン  本センターのもう一つのミッションは、リグニンの新たな機能の開拓です。リグニンの樹脂化は、現在、世の中で使われている構造材料を置き換えようとするものです。しかし、リグニンからこれまでにない優れた機能を持つ材料ができれば、リグニンの応用も広がります。具体的に何を作ればよいという開発目標があるのではなく、リグニンの未知の可能性を発掘することが、新規材料開発の基礎研究として非常に重要なわけです。  リグニンはポリフェノール構造から成り立っており、当初、我々はそのポリフェノールをいかにして架橋し樹脂化するかということを考えていました。ところがある日、健康飲料の成分にポリフェノールと書かれていることに気づきました。そこで、リグニンも食品に添加されているポリフェノールと同様に、抗酸化性などの機能があるのではないかと思いつき、早速、実験してみると、普段使われている合成抗酸化剤よりもはるかに優れた非常に高い抗酸化性があることを見出しました。しかもリグニンは天然由来物質ですから人が使用するとしても安心です。現在はリグニンの抗酸化機能をさらに詳細を調べており、リグニンの構造を少し変えることにより、さらに抗酸化性を高めた材料を得ることにも成功しました。リグニン樹脂を使ってコップを作れば、例えば、お酒を注いでも酸化することなく、いつまでもおいしくお酒が飲めるコップになるかもしれません。  現在、リグニンの抗酸化性を活用して化粧品や飲料への応用も進めています。また、この発見をさらに発展させ、基礎研究段階ではリグニンに抗菌性や抗ガン性があることもわかってきました。スウェーデンにカロリンスカ研究所というところがあります。そこはノーベル医学生理学賞の推薦機関として国際的に有名な研究所ですが、我々の発見を聞きつけ、難病の薬として応用できるのではないかと共同研究の申し入れがあり、現在、医薬品としての応用研究も進めています。 ■リグニンは樹木由来ですが、木も限りある資源のように思います。枯渇する心配はないのでしょうか?  その心配はありません。一見、木を伐ると森林が減って環境を破壊するのではないかと思われがちです。しかし、樹木は空気中の二酸化炭素を吸収しどんどん成長するので、実はその成長した分だけ伐採しなければ、森林を定常に保つことはできないのです。1本の苗木は約50年かけて成長し、立派な大木となります。そして、その大木は伐採され、材木となり、家具や建築資材として活用されます。こうして炭素は、大気中の二酸化炭素から樹木や木製品として50年以上かけて循環しているわけです。さて、苗木を植えたままにしておくと、やがて樹木が成長し、枝が伸び、日当たりや水はけが悪くなるなどの問題が生じるため、適切に間伐を行い、森林を維持する必要があります。このような森林の維持のために日本国内だけでも年間5000万トンもの樹木を伐採する必要があります。現在およそ年間500万トンの合成樹脂が石油から作られていますが、他方、年間800万トンもの間伐材は、使われないまま山地に放置されたり廃棄されたりしています。その捨てられている残材を活用するだけで、工業的規模で安定的にリグニンの原料を得ることができ、同時に、森林を定常的に保つことができるのです。 ■今後の課題や展望についてお聞かせください。  現在、我々は石油から脱石油という大きなパラダイムシフトに直面しています。このような大きな時代の変革の中では、ただ単に優れた技術を開発するだけではなく、それを実現するための社会システム全体での取り組みが必要となります。  例えば、私は今、水素で動く燃料電池車に乗って通勤しています。燃料電池車は燃料が水素なので、二酸化炭素を一切排出しない優れた技術ですが、国内の水素ステーションの数は極めて少ないため、もし世の中の人が一斉に燃料電池車に乗り換えたら、十分な水素供給ができません。逆に今ガソリンスタンドと同数の水素ステーションを作ったとしても、燃料電池車が普及していなければスタンドの経営が成り立ちません。これと同様に、社会が脱石油材料のみを使うという方向に舵を切ったとしても、その材料であるリグニンを供給するシステムと日本の各材料メーカーがリグニンを用いてものづくりをするシステムの両者のバランスを保ちつつ発展させる必要があります。即ち、日本各地に林地残材からリグニンを取り出すプラントを建設し、同時にリグニンから様々な樹脂を開発する技術を我々が開発し、また、日本の材料メーカー各社は従来の石油由来樹脂からリグニン樹脂へ材料を置き換えるという取り組みの、どれが欠けてもシステムがうまく回らないのです。  現在、我々の使うリグニンは、杉などの針葉樹から取り出したものです。杉は日本固有種の樹木で国内各地に広く存在しているため、将来、リグニンから石油代替材料を生産するという時代になれば、日本各地にリグニンの生産拠点が建設され、その地方の産業の活性化がはかられます。それによって地方の人口増加や社会システムの向上などの地方創生にも寄与することができます。リグニンの活用によって工業を活性化させるだけでなく、地方創生を通して国全体が豊かになる、そういう取り組みを我々は進めています。  もちろん、先ほど申し上げたように、森林を維持する過程で伐採された林地残材を活用してリグニンを得るので、環境に負荷をかけることはありません。それどころか、森林を維持することによって杉花粉の飛散を抑制し、あるいは花粉を出さない杉への植え替えを進めることもできます。  もう一つの課題は、これまで私たちが材料を開発するために活用してきた「化学」という学問です。現代の化学は、石油に由来する有機分子を反応させたり構造変換を行ったりするための方法論を体系化したものです。しかし、樹木中のリグニンから材料を作るという新しい時代が訪れると、その木質由来物質を反応させたり、それらの物質の物性を解明したりするという新しい学問が必要となります。今、私たちが行っている研究は、未来の研究者、未来の学問への貢献となると考えています。 ■学生はこのセンターでの研究に関わることはできるのでしょうか?  先端リグニン材料研究センターは民間企業との共同研究に加え、政府の国家戦略プロジェクトに参加して研究を行っています。それらの研究テーマには、本学学生や大学院生らも参加しています。先ほどご紹介した抗酸化性の評価も、この研究に参加した学部学生の研究によって解明されたものです。多くの学生は、学部時代に卒業研究を完成させ、大学院に進んだ時点で、その成果を学会で発表します。ところがリグニン研究を担当した学生は、学部生の時点で2回ほど学会発表をするという機会に恵まれました。来春にはフランスでの国際会議にも出席させたいと思っています。本研究センターの研究に参加した学生は、国家プロジェクトなどの国の未来をかけて、社会が真剣に取り組んでいる研究を体験できることや、これまでの化学とは違った未知の材料の未知の反応を手探りで解き明かし、新しい価値を創造するという経験ができ、その経験は彼らが将来、研究者となった際には大きな力となると思います。 ■最後に受験生・高校生へのメッセージをお願いします。  私たちが若い頃は、「日本は資源のない国だから、先導的な研究を行い、新しい価値を創造しなければならない」と言われてきました。いずれ石油に代わってリグニンなどの木質資源が使われる時代になると、日本の森林面積率は世界第2位なので、日本は世界有数の資源国となります。そのような時代には、みなさんは頑張って勉強して良い大学に入り、必死になって仕事をしてお金を稼ぐという生活をしなくても、ただ遊んでいるだけで現在の石油産出国のような豊かな生活ができるようになるかもしれません。とてもうらやましい限りです(笑)。ただ、そのような時代になったとしても、先導的な研究を行い、新しい価値を創造することは非常に重要だと思います。それは一つには、その次の時代の変化に備えなければならないということがありますが、もう一つ重要なのは、人間として生きている限り、知的な興味を持つことが大切であるということなのです。  先導的というのは、他の人がやっていること、既に発見され使われているものをより優れたものに改善していくということではありません。他の誰もやっていないこと、これまでにない新しいものを自分自身で創造するということです。そのような誰も正解を知らない世界に挑戦するには多くの苦難、多くの失敗がつきものです。その時、ただ自分の目標に向かって進み、目標を達成すればよいと思うのではなく、正解に至るまでの失敗や苦難の道のり自体を楽しめる心を持つことが重要だと思います。研究の過程では、当初予想していなかったような現象に出会うことがあり、それが大発見につながったということが少なくありません。もし目標ばかりを目指していたならば、その発見を逃してしまうかもしれません。  研究ばかりではなく、人生も様々な苦難に満ちています。私自身も自分の人生を振り返れば楽しかったのは、せいぜい小学校くらいまでで、その後の人生は数々の苦難や理不尽なことばかりでした。恋愛など成就したためしがありません。そのような人生において、最後に行きつくところまでひたすらつらい思いをするのではなく、苦楽の一つ一つが味わいだと思う心があると、人生を幸せに過ごすことができます。  発明王エジソンは失敗をしたことがない、ということをご存知でしたか? それには続きがあり、「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」ということだそうです。即ち、科学においてはじめに意図したのとは違う結果がえられたとき、それは失敗ではなく、発見につながる貴重な知見であるということなのです。みなさんも将来に向けてこうしたい、こうありたいと思う夢を持ち、臆することなくその夢に挑戦し、その過程を楽しみましょう。 ■工学部応用化学科: https://www.teu.ac.jp/gakubu/eng/ac.html ■先端リグニン材料研究センター: https://www.teu.ac.jp/karl/lignin/index.html お知らせ一覧 2024年のお知らせ 2023年のお知らせ 2022年のお知らせ 2021年のお知らせ 2020年のお知らせ 2019年のお知らせ 2018年のお知らせ 2017年のお知らせ 2016年のお知らせ 2015年のお知らせ 2014年のお知らせ 2013年のお知らせ 2012年のお知らせ 2011年のお知らせ 情報公開 プライバシーポリシー ソーシャルメディアポリシー 本サイトについて 採用情報 JP  EN  PC表示切り替えスマートフォン表示切り替え twitter instagram LINE LINE YouTube Facebook ©Tokyo University of Technology 資料請求 ネット出願 twitter instagram LINELINE YouTube Facebook ページの先頭へ 資料請求 ページの先頭へ close ホーム 大学概要 学部・大学院案内 入試・入学案内 キャンパスライフ 地域連携・国際交流 就職・キャリア支援 教育・研究案内 受験生 在学生 卒業生 教職員 研究者の方 採用担当者の方 お問い合わせ 交通案内 サイトマップ ネット出願 資料請求 検索 JP EN 学部・大学院案内 工学部 コンピュータサイエンス学部 メディア学部 応用生物学部 デザイン学部 医療保健学部 大学院 教養学環

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